ONE MAN SHOW TOUR 2015 「光博歌合戦」

──で、その25周年に出すアイテムをベストアルバムにした理由も聞かせてもらえますか? 実は20周年の時にも『20 ―TWENTY―』というCD3枚組のベストを発表していた経緯があるので。

うん、ベストはベストでも、コンセプトが違いますからね。『20 ―TWENTY―』の段階では、ビクター移籍後の音源はほとんどなかったわけですよ。でも、そこから、『男心DANCIN’』(2015年)、『パンチドランク・ラヴ』(2016年)、『FUNK A LA MODE』(2017年)、『BEAT&ROSES』(2018年)、『BE MY ONE』(2020年)と、オリジナルアルバムを5枚出してきたと。で、今回はその中からの楽曲を中心としたベストアルバムにしたかった、ということなんです。

──なるほど。そこでおもしろいと感じるのは、近年のビクター期だけでなく、それ以前の楽曲も何曲か収録されていますね?

もちろん。25周年のベストアルバムですから、そこは過去にお世話になったレコードメーカーや前事務所の協力も得て、この16曲にしました。で、このラインナップは相当、気に入っていて──やっぱり、昔から応援してくれているベイベーたちって、僕が20代や30代のころの楽曲に強く思い入れがあると思うんですよ。だから、そういう楽曲もバランスよく交えながら、現在に至るまでの構成がうまくできたかな、と思います。

──確かに。僕も、通して聴いて、曲ができた時期に開きがあるはずなのに、こうして並ぶと違和感がないって感じました。むしろ「これ、この曲順のままミッチーがワンマンショーをやれる! で、お客さんは大満足じゃないかな」と思いましたね。

うん。だって、自分でも聴いていて興奮しますもん!(笑) しかもさ、過去と現在を行ったり来たりするから、走馬灯じゃないけど、1曲ごとにいろんな思い出が蘇ってきて…「ああ、精一杯生きたな、俺!」みたいな感動もあって。「いやいや、悔いのない25年だったな」って、良いことばかりを思い出せるんですよねぇ。壁を乗り越えたとか、悲しい別れとか、苦しいこともいっぱいあったのに。…これ、離婚のことじゃないですよ?(笑)

2015

──(笑)自分で言わないでください。

(笑)と、そういった過去を含めてさ、いろんなことがあっても、結局、人って、今が充実していればオールオッケーになるんですよね。そういう意味では、“血と汗”なんて言うと僕らしくないけれども、(このアルバムの曲たちは)その結晶なんだろうね。自分が生きてきた証と言うか。

──はい。では、そんな今回のベストアルバム『XXV(ヴァンサンカン)』について、より細かく聞いていきますね。まずはディスク1の世界観から。先ほども話題に出た通り、2015年から2020年までのビクター期に発表された曲を中心に、それ以前の楽曲も交えつつの選曲となっているわけですが、その中で唯一、新たにレコーディングされた楽曲がありまして──。

『ダンディ・ダンディ』ね。

──ええ。2015年2月、ビクターからの第一弾リリースシングルでもあった『ダンディ・ダンディ』を、今回はバンド感あふれるサウンドでレコーディングし、『ダンディ・ダンディ<2021>』として収録したと。その理由を教えてもらえますか?

僕のキャリアの中で、プロデュースを他人に委ねた唯一のアルバム──それが『男心DANCIN’』で、『ダンディ・ダンディ』はそのアルバムからのリード曲でした。で、もちろん僕のライブでも人気曲なんですけど、(オリジナル版の)EDMという音楽ジャンルが、このベストの中では浮いてしまうので──まあ、それを含めて僕の多様性という言い方もできなくはないんですが──やっぱりリリース後のライブでしっくり来ていた(バンドサウンドでの)アレンジで収録したいな、って思いました。お客様も、もはやこっちのバージョンの方が聴き慣れているのではないかなと。

──その点では、再レコーディングも違和感なくやれたという。

ええ。むしろ、はしゃぎ過ぎ!(笑) やっぱり、ザ・ファンタスティックスのメンバーが集まってレコーディングすること自体、楽しいんですよ。僕のボーカルも、6年前とは違って“歌いこんでる感”が出ていると思うし。これはどのアーティストもそうなんだろうけど、歌っていうのは、新曲としてレコーディングした時点から、何年もステージ上で表現していくことで、進化なり変化をしていくと思うんだよね。…うん、そこですかね、(新録した)大きな理由は。

──なるほど。しかし、改めて聴き返すと、ブッ飛んだ歌詞ですよね(笑)。

そうですね(笑)。

ONE MAN SHOW TOUR 2015 「光博歌合戦」

──こういう、良い意味での脈絡のない、言葉遊びみたいな歌詞って、実はミッチーがデビュー時から要素のひとつとして持っているものだって気もしますが?

ああ、ふざけているようで、芯をくった歌詞ね(笑)。そういうのが、歌っていて楽しいんです!

──(笑)そんなこの曲『ダンディ・ダンディ』の歌詞の中で、ミッチーは「30代もファンキー☆ ~ 40代もファンキー☆ ~ 50代も超ファンキー☆」なんて歌っておりまして──

そこ、なかなか良いよねぇ(笑)。多分、当時45歳の僕が、“50代になった自分”も見据えて作ったんでしょうね。…この曲、当初は「男子が盛り上がる曲を書こう!」と目指しましたから。要は、オジサンであることを肯定的に歌う、と(笑)。で、僕は、ダンディな大人では在りたいんですけど、精神年齢がどうも…、経験値は高まってはいるものの、人間的な成長はできてないなっていう、そんな歌です(笑)。

──(笑)いずれにせよ、こういうアゲアゲのパーティーチューンを思いっきりやれる部分が今もあるっていう、そこもミッチーらしいところだなと。

そうですね。やはり僕は、特にライブを意識した曲作りをするし、言葉を伝える対象がはっきりしているんですよね。漠然と「日本中に届けよう」なんて思ってなくて、「今、目の前にいるあなたに届けますから!」っていう。…うん、そういう意味でも、やっぱりライブなんですよ。ひとり言みたいな歌を自宅録音して、ニヤニヤ楽しむタイプではないので。

──まあ、当初はそういうところもありましたけどね。ファーストアルバム『理想論』の1曲目(『宇宙人デス。』)とか…。

あっ、そりゃ最初はね! だから、そこが変わったんだよな。レッツ自己解放で!

──(笑)はい。で、ベストアルバム『XXV(ヴァンサンカン)』に話を戻すと、1曲目が『ウィークエンド・ランデヴー』。元は2016年のアルバム『パンチドランク・ラヴ』収録曲ですが、この曲こそライブの1曲目にぴったりな感じで──ピュアなときめきを歌ったラブソングでありつつ、ライブにおけるお客さんとの関係にも当てはめられる歌詞世界ですから。

そうですね、まさに1曲目にふさわしいっていう。及川光博の世界へと誘う、導入部分ですよね。

──「さあ 手をのばして 夢のような旅に出よう」とか、「二度とない キラメキ☆モーメント」なんて歌詞も出てくるし…。

もう、アイドルの歌詞だよね! それも、昭和の(笑)。今のアイドルはこんな歌詞を歌わないっていう。

──(笑)それでいて、サウンド的にはホーンが絶妙に絡んできたりとか、この『ウィークエンド・ランデヴー』は、ミッチーらしいブラックミュージックとポップスの融合形だと分かりやすく感じる楽曲です。

これはアレンジがCHOKKAKUさんですからね。長い長い歴史の中で、CHOKKAKUさんとは常にいろんな曲を作ってきましたし、僕の萌えポイントもよく分かっていただけているうえで、こういうアレンジにしてくれるっていう。僕自身、大好きな曲です。